6月の終わり、抗がん剤放射線治療を受ける前に集ってもらった御友達8人(4組の夫婦)にまた来てもらった。


罹癌(という言葉があるのだろうか?)以来、 Rachel Remenの著書「Kitchen Table Wisdom 
http://books.yahoo.co.jp/book_detail/30768762)」
は私のバイブルになった。その中で、彼女は手術や大変な治療を始める前に小さな儀式をすることを薦めている。


大事な友達、親戚に小石を持って集ってもらう。車座になって彼らにとって一番大変だった時のことを話してもらう。人に寄っては愛する人の死を語る人もいるだろうし、経済的危機について話す人もいるかもしれない。その後彼らはどうやってその危機を脱出したかを語ってもらう。『祈り』で救われたと言う人がいるかもしれない。ユーモアで乗り越えた人もいるかもしれない。その後「貴方にユーモアの力をあげる」「祈りの力をあげる」と言いながら小石を患者に上げるのだ。


6月、癌患者としてはまだ初心者だった私は、これからどうなるのか不安で仕方がなくて、人恋しくて、何か自主的なことをやりたくて、我が儘を言ってみんなに集ってもらった。「えっ、そんな儀式苦手だな。何を喋ればいいのだろう。あんまり個人的なことは話したくないな」と思った人も多かったに違いない。


彼らが私と共有してくれたスト−リーは彼らの人格の核を成しているとっても個人的なものだった。本来ならば家族の中でだけで、夫婦の間だけで、体験を同じくした者だけの間で言葉なしでシェアーされる類いの話だった。そして彼らが分けてくれた危機脱出、危機甘受の方法も智慧も、いかにも彼ららしいものだった。


私は、皆が心の中に護りたいものとして仕舞っている宝物をこじ開けて覗くようなことを要求したのかもしれない。しかし、彼らはその宝物と叡智を惜しみなく私に分けてくれた。そして私達夫婦にとって、以前よりもっと大事な友人になった。私達は彼らのストーリーを忘れることはないと思う。


あれから丁度半年が過ぎた。まだ食べるのに苦労はしているけれど私はかなり回復した。これからまた何度か拡張手術をしなければならないだろうけれど、ようやく今後の展望が出来るようになった。治療に向かってあがいている時期は過ぎたようだ。


6月に8人の友達と一緒に始めたチャプターは一応閉じても大丈夫そうだ。1月2日はまだお正月。この節目を祝ってもいいんじゃないかと一品持ちよりで集ってもらった。


次章は前章を終えたところから始まる。