ここ2週間で放射線科の医者と腫瘍内科医の2人にお会いした。食道摘出をしてから6年半。体重、体温、血圧の測定、血液検査の後は殆ど雑談。スマートフォンのアプリケーションの話やキルケゴールの話が出て「忙しいお医者さんとこんな話していいのかしら」と思っちゃったぐらい。でも、以下はちょっと医学的な部分。


放射線科の医者にはなかにし礼さんが選択した陽子線治療について聞いてみた(私はIMRTの放射線治療を彼から受けた。)まだまだ解明、研究されなければならない治療法ではあるけれど、多額の助成金が出ている分野であり、彼もその研究に参画しているとのことだった。


私の場合体重が全然増えないのがネックといえばネック。年齢的にも筋肉が落ちて来る年代なので、アンクルウェイト(腕や足首にマジックテープでくっつけて運動に負荷をかけるもの)を薦められた。


腫瘍内科の先生によると、新しい食道癌の患者が増えていて現在彼の監視の下、2人の患者が手術待ちであるとのことだった。


ところで、雄三さんのサイトに出ていた記事が気になった。『どうせ死ぬなら「がん」がいい』(宝島社新書/中村仁一共著)を上梓した近藤誠氏へのインタビュー記事だ。

確かに患者は様々な治療法を年齢、体調、病期などと共に秤にかけて最適な方法を選ぶべきだ。化学治療が命を奪うことも、縮めることがあることもある。治療を拒否することも選択肢の一つに入っていなければならない。しかし、以下の食道癌についての記事には絶対に賛成できない。

早期発見努力をせずに、例えば肺がんであれば少し呼吸が苦しいとか、食道がん胃がんは食べ物が通らないとか、そのような自覚症状が出てがんが見つかった場合は、それは「がんもどき」ではなく、本物のがんですね。それに対しては体が一番楽な治療、つまり外科手術は避け、臓器を残す非手術的な治療を選ぶことです。

選択の道は2つあります。例えば食道がんだと、1つは、食べられなくなっても完全放置することです。そうすると、最後には水も飲めなくなって餓死することになります。健康な人が食べたいのに食べられないというのは悲惨ですが、体が衰弱して食べようと思っても無理というときには、心理的な飢餓感は少なくなるようです。この道を選ぶのはなかなか難しいのですが、体は楽なまま死ねます。

まず、食道癌に関しては、内視鏡手術技術が進み「早期発見」であれば内視鏡手術で治療できる。私のような開腹手術も腹腔鏡をつかったりして侵襲性が小さい形が開発されている。また物が食べられなくなっている状態だとすでにリンパ節に転移している可能性が非常に高い。

また以下の放射線治療に関する情報も古い。放射線治療だけでは不十分あったことがすでに様々な形で伝えられている。

もう1つの道は、放射線治療を選択する道です。食事をすることができるようにもなりますし、長生きできる。それに臓器を残すわけですから、QOL、生活の質の面でもいいですね。12時間もかかる、開胸・開腹手術をしなくても済みます。しかも、比較試験の結果を見れば、外科手術より放射線治療のほうが成績がいい。

癌にかかった時に一番嫌だったのが、こういう類いの「癌ひとからげ」の情報だった。そこに引用されているデータは古く、暴力的に一画的だ。大事なのは患者一人一人が個々の癌に特化した最新の情報を得た上で判断して行くことだ。


放射線治療抗がん剤治療、臓器摘出手術を経ても元気で生きている「元患者」がここにいます。もし、早期発見(と言っても2期と3期の間でしたが)がなかったら、今私は生きていません。