今朝はルンルンで例のヒーラーさんのところに行った。経腸チューブを繋いでいる間は身体を殆ど「く」の字に曲げて寝なければならない(枕を高くしないと、チューブで入れている液体が逆流する)。その姿勢で寝るのはつらい。身体中が痛くなる。だから今日はマッサージをしてもらって、かなり柔らかくなった。


食道にも手を当ててもらったけど、今日はあんまり熱を感じない。マッサージが終わったところでヒーラーさんが「今日は食道にあまり何も感じなかった。この前は黒いもの、死にかけているものを感じたんだけど。だから、きっともう治りつつあるのよ」と言った。少なくとも癌細胞が全部壊れたことを信じたい。多分私がこの間感じた熱は自分の細胞が出している熱だったのだろう。


午後は癌科の医者に行った。週末経腸チューブの周りが赤くなっているのを発見した。経腸チューブは2カ所で固定されている。医者は化膿したものが固まっていると言ってクリーニングをして、チューブを固定している糸を一カ所はずした。きれいにはなったけれど、このままにしておくとチューブが抜ける可能性がある。診察台が急遽簡易手術台(医者は『僕は医者さんみたいだ』と言っていたけど)に早変わり。ノボカインで局所麻酔をして新しく縫い直してくれた。


来週の月曜日には外科医に行く。それまでの応急手当である。


私の癌科医は「友人の友人で近所の人」という縁がある。本来ならば暗くなり勝ちなクリニックを口笛を吹いて歩き回り陽気な雰囲気を自分からつくりあげている人だ。化学療法中も私のヘッドフォーンの電池が切れかかっていたら自ら電池を換えてくれたりもした。


先日「食道炎が治るのにどのぐらいかかるでしょう」と訊いたら「Multiple few days」(2、3日の数倍)と答えたのでもっと追求した。「『Square』(2乗)あるいは『cube』(3乗)かな」と真面目な顔で言った。放射線治療が終わって今日で9日目。どうやら3X3の2乗じゃなくて3乗の21日はかかるようである。


しかし、今日の対応の早さ、俊敏さを見て『優秀な医者なんだな』という思いを新たにした。


「この経腸チューブの障害もstandard deviation (標準偏差)のうちですか」と訊いたら、「全然標準外」という言葉が帰って来た。これまで彼の扱った経腸チューブの例だと5、6週間前ぐらいに応急処置をするのが普通なのだそうだ。私の経腸チューブのスティッチと手法は彼が今まで見た中で一番「美しい」ものだと言う。行くたびにそれを言うので本当なのだろう。


癌科の待ち合いで2人の子供(2歳と4歳ぐらい) を連れた若いお母さんが新患で来ていた。おばあさんとご主人も一緒である。こんなに小さな子供がいてと心が痛くなった。


甲子園で準優勝した駒大苫小牧の監督が対米国戦の監督役を辞任したという。北海道で胃潰瘍の検査をするらしい。そういうニュースを読むとすぐに「癌じゃないだろうか」と悲しくなってしまう。私の深読みでなければいいけれど。