2月10日金曜日は放射線科医との検診だった。もう5年生存を達成したのだが「生きている限りは検診する」と言われている。


体重、血圧、体温の検査の後は、首と腋のリンパ節を調べて終わり!会話の内容はヨーロッパの経済、米国の景気、最近の治験の現状など。


「5年ってすごいですよね。何だか癌にかかったことも脱ぎ捨てちゃった上着みたいな気がします」(とうまくは喩えられなかったけど)と言ったところ、答えが面白かった。

「僕は全くの素人ではあるけれどね、世界中の宗教を見てみるとね、だいたい3年で嘆きのサイクルが終わるんだよね。癌に罹るってことは1つの喪失だからね」

確かに自分の回復の歴史を振り返ってみても3年で一段落がついたような気がする。

この先生、私が抗がん剤放射線のダブル治療でひぃひぃ言っていた時にはトルストイの短編「イワン・イリイチの死」の話をしてくれて、「君はイリイチの描写と全く違うから大丈夫」と言ってくれた。これから死ぬまで診てもらえるわけだから、親友ができちゃったようなものである。得したなぁ。


さて、2、3週間前に「小澤征爾さんと、音楽について話をする」(by 村上春樹)を機上で読んだ。村上春樹が小澤さんに2010年11月から2011年の7月にかけてインタビューした会話を忠実に書き留めたものだ。小澤さんの癌が発覚したのが2009年の12月だから、小澤さんにとって回復期の身体がニューリアリティになった時期。インタビューの所々に含まれている「小澤さん餅を食べる」などの描写がちょっと痛い。その後の回復も順調であることを、心から祈ります!

ところでこの本、鬼才の2人のダイアローグとしても凄く面白いのだが、今は出て来る音楽をyoutubeで聞きながら読み返している。素人がクラシックファンになっちゃいます。その重層な内容は1600円では安過ぎです。