12月14日CTスキャンの後、Brigham & Women's Hospitalの外科医による術後3年3か月目の検診。外科医Dr.Bが開口一番に言った言葉は「君はアーティストなんだってね。すごく将来性があるっていうじゃない。この次は絵を見せてね」(先生、それ、お世辞にしても言い過ぎ!)


ここに書いたけれど12月に水彩の先生のオープンスタジオで始めて自分の絵を展示した。その時絵を購入してくれたのが当病院のCIO(女性です!)彼女と医者の間でEメールが飛び交ったに違いない。外科医も人の子なんて言うと怒られるかもしれないけれど、冷静沈着、どちらかと言うと機械的な彼がここ1年半程はとても人間的で優しくて上記のような『お世辞』まで言ってくれる。元気で生存している患者を診るのは嬉しいに違いない。


CTスキャンは問題なしで「90%完治」という言葉を頂いたのだが、「あれ、内視鏡検査をしたんじゃなかったっけ?」と言われた。夏の検診時に内視鏡検査をするように言われていたのだが、仕事とぶつかってしまってドタキャンをしてしまいそのままになっていた。よって検査が23日に行われることになった。


Dr.Bは内視鏡もブジー全身麻酔で行うため21日に術前検査。胸部レントゲン、尿検査、EKG、血液検査を含む大掛かりな物で結局は丸々半日つぶれた。24日の検査は朝9時半開始だったので病院到着は7時半。運転は夫。麻酔は2時間強で切れたので病院を出たのは2時前。クリスマスイブの前日なのでそのままフィッシュマーケットやベジタブルスタンドに寄ってもらい買い物を済ませた。。。けれど、力つきて(?)その日はそのまま長時間爆睡してしまった。夫によると検査が終わった時点でDr.Bがオペ室から出て来て「何ら問題なし。ブジーでちょっとだけ拡張した」と告げたとのこと。1月4日に術後診断があるので、その時に説明があると思うけれど、心配するところは無いらしい。



私自身の癌からの回復は3年以上が経過し、食べる量がなかなか増えないことを除けば申し訳ないぐらいに順調だ。そして今年はな〜〜んにもしなかった年だと思ったのだけれど、振り返るとかなり忙しかった。あんまり無理した思いはないのにかなり忙しかったと言うことは、ほとんど100%回復している証拠だろう。


1月は夫とバリで時間を過ごし、日本に帰省。2月〜3月には日本のシンクタンクコンサルタントNASAとかDupontを廻る仕事をした。3月はシカゴで遊び、4月は日本で仕事。5、6、7月はブタフルで仕事が次々とキャンセルになった替わりにかなり絵を描いた。8月はフランスからのお客さんを10日間歓待。9〜12月初旬までは(不況にも拘らず)仕事がそこそこにあった。12月の始めには癌回復時に始めた水彩を先生のスタジオで披露し、図々しくも絵を2枚売ってしまった。そして12月のクリスマスシーズンは久しぶりに(3年ぶりに)手抜きをせずに連日台所に立った。


しかし、今年この回復に一番影響のあった人を失った。私に「癌サバイバーのための希望の処方箋」をくれたDr. Peter Levineが亡くなったのだ。

私の癌が発覚して直ぐの頃、血液学者であり腫瘍内科医、かつまた彼自身が多発性骨髄腫とメラノーマの2種の末期癌からの生還者である氏が自分の死からの生還の経験をもとに癌サバイバーの生き方を教会で話してくれた。

彼は癌からの回復のために必要なことは以下だと語った。


1。行きてるうちに絶対にパリに行くんだ、とか息子の結婚式に絶対出るぞみたいな「これっきり」の大きな目標を立てるな。小さな目標を一つ一つたてて生きなさい。

2。家族や友人に言いたいことがあったら、『命は明日で終わる』覚悟で伝えておきなさい。

3。癌の治療研究は凄いスピードで進んでいるので、新しい治療を恐れるな。

4。誰かの人助けをしなさい。

5。回復期に何か新しいことを始めなさい。

ここにも書いたけれど、その氏が12月15日に突然の心臓マヒで倒れ、亡くなった。


私が癌からの回復期に水彩を始め、下手なりに絵を披露できるまで描き続けることができたのは一重に彼のガイダンスのおかげだし、家族や友達との時間を大切にするようになったのも、自分の好きなことを大事にするようになったのも、あんまり無茶に頑張りすぎなくなったのも、喪失を経験した人と自然体で時間を過ごせるようになったのも彼のおかげ。


彼を失ったショックから覚めやらぬ時に夫から「君の水彩は彼のレガシー(遺産)だね」と言われたけれど、本当にそうで私はとても幸運だ。さらには彼の「希望の処方箋」を癌闘病者、そのご家族に伝えることも、また良く言えば淡々とした実はノー天気な私の生存記録を時々アップデートすることも彼のレガシーであるのかもしれない。

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現在はid:kuwachann-2_0の日記にノー天気な記録を付けていますが、検診のような大きなイベントがあった時はこのブログもアップデートしています。

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