先日時々お邪魔させていただいているid:ayumi_aさんのブログで癌保険、自己負担の話が出た。彼女は昨年の乳癌治療の後処理として卵巣機能を押さえるリュープリンという皮下注射を1か月に1度打たなければならないのだが、その注射と経口剤会わせて毎月19640円なりを払わなければならないのだそうだ。ドルに直すとおよそ200ドル/月の支出。米国での安い車の月々のリース代と同じぐらいだから、これはかなり痛い。


ここでのid:ayumi_aさん談によると、昨年は保険内診療、自由診療をトータルして自己出費がおよそ100万円近く。抗がん剤治療1回につきおよそ4万円、手術に入院費で15万円ほどの負担があったとのこと。道理で治療中(とず〜〜っと後になって理解したのだが)親戚や親から「お金は大丈夫」と言われたわけだ!


日本ではマイケル・ムーアSickoが有名になり「米国の医療保険制度ってホント顰蹙もの」というスタンスが普通になり、現在のオバマ政権の医療改革、国民皆保険制に対する共和党、製薬会社、医療保険会社の反対に「アメリカって医療後進国だわ。日本の方がずっとマシ」という優越感をもっている方が多いと思う。確かに沢山の人が医療保険を購入できないし、保険でカバーされない医療費も多く、それがもとで借金で家を失ったり、破産をする人も多く、改革は是非進められなければならない。



しかし、米国で保険があると癌に罹病した時の負担金がとても小さいことはあまり知られていないのではないだろうか。私の食道癌はII期とIII期の間だったので、経腸チューブ挿入、抗がん剤治療、放射線治療、食道摘出手術、とフルコース(調子を崩してERに担ぎ込まれたことさえある)だった。だけど喘息用の薬、痛み止めなどの薬代を合わせても15万円ぐらいの負担で済んでしまったのだ。


保険にかかっているとcopaymentというシステムがあり、医者にかかった時、薬を購入する時、たんびに小額負担をする。私の場合腫瘍内科医に行って抗がん剤治療をしてもらうたびに10ドル(1000円)、薬を出してもらう度に10ドル(喘息薬は例外で30ドル)の支払いだった。外科治療に関してはpet,MRI,CT,レントゲン、超音波、内視鏡の検査、全摘手術、経腸チューブ挿入の全てが治療の一環としてみなされ、自己負担はゼロ。それどころか経腸チューブ挿入からケモラジ、全摘手術を通じて毎週家に来てくれた看護婦さんのコストも経腸チューブ用の缶入りのサプリメントも全て無料。もちろん入院費の負担はなく、狭窄の拡張手術も無料。


別に特別にいい保険に入っている訳では無い。1年に1度、夫の勤めている大学が保険購入のメニューを出してくれる。大学側は3種類ほどの保険のメニューをもっているので、負担額もベネフィットもまぁまぁのを選んで天引きしてもらっているに過ぎない。


結局、今の米国には、医療改革の結果、日本のように癌にかかると自分の懐から100万円も出さなきゃならない医療保険になってしまうと、「改悪だわ。オバマ何やってるの!」と思う人々が沢山いる、いやそんな人がマジョリティなのだ。言い方は悪いけれど、日本は敗戦したために様々なインフラや、既得権層が破壊され、そのお陰で国民皆保険制を施行することができた。オバマの改革は、よほど上手く行わないと不平、批判が様々な形で聞こえてきそうだ。。。


ところで、食道癌の場合、患者の負担額はいったいどのぐらいなのだろうか?