朝7時半に癌専門放射線医Fと会う。私の放射線治療はIMRTという新しい機械と手法、プロトコールを使って施された。彼は米国のCancer Societyで治療のガイドラインやリコメンデーションを示す立場にあるので、私の治療と回復は一種治験の感じで観察されている。だから治療自体は2006年の8月に終わったのだが、今日は長期観察のために1年ぶりに彼と会った。


先日から気になっていた「晩期毒性」のことを聞いてみた。晩期毒性というのは、これまでの手法や機械だと周囲の臓器に放射線が当たり毒性が出て来ていた危険性だ。彼によると私のIMRTの場合は、腫瘍の形にぴったり沿って放射線を当て、回りの臓器はシールドで保護したから「大丈夫な筈」とのこと。IMRTの手法は喩えて言えば「コンピューターゲームでターゲットをねらう形の治療」だと言う。「大丈夫だ」とは言え、彼が私のことを毎年観察する1つの目的はこの毒性観察のためなのだろう。


日本では食道癌の患者に「手術」か「抗がん剤放射線治療」のどちらかを選ばせるので、患者の心の負担が大変なようです、と聞いてみた。それに対する彼の返事が興味深かった。


手術がいいか、ケモラジでも同じような効果が出るか、もちろん医者は知りたくて仕方がない。昔、乳癌の治療法確立時に乳房切除か、放射線抗がん剤治療かということで患者に対しランダムに治療法を選びリサーチをした。そして、放射線治療の効果性が確立された。しかし、現在の治験ではランダムに治療法を選んで研究することは出来なくなっているからだと言う。


しかし、と彼は続けた。「私は現在はまだ摘出手術の方が効果があると信じます。放射線抗がん剤だけで大丈夫と言えるようになるためには、この治療法が手術よりずっと効果が高くならないと。。。」


帰り際、放射線医にもこの日記の英語版(去年の5月まで)を贈呈した。私の症歴を彼が観察しているのなら、放射線治療でつらかった食道炎を含めて全ての患者側の情報を提供した方がいいだろうと思ったからだ。


ところで、私の食管は20ミリ開いている。拡張手術の度に外科医は20ミリまで拡げてくれているので、グローバルスタンダードだと思っていたのだが、他のところではそうではないらしい。食道外科の先生のサイトによると、そこまで拡げると裂けるかもしれないので、14ミリのブジーが通ればそれで良しとしているのだと言う。医者の立場からは確かにそうだ。


ところが、この20ミリでも患者はかなりつらい。今日はスープが入らない。食べたスープがどんどん戻ってくる(汚い話でごめんなさい。)そして気持が悪い。食事の後何も出来なくなって休んでいたのだが、2時間ぐらいしてまたもや出て来る。その中にオムスビを包んでいた海苔(1センチ四方ぐらい)があった。これが犯人だった!食管の壁にぺったり張り付いていたのか、縫合部分を塞いでいたのか。。。