サンタさんは、クリスマスの早朝に赤いジャケットを着てホームメードのクッキーをお土産に現れた。


夏場散歩をしている時にすっかり親しくなったインド人のオバさんマニックさんだ。彼女はキッチンのテーブルに座るなり話し始めた。


「今私神様と闘ってるの」
「え、どうして」
「だって、あなたまだ食べられないじゃない」


そうだった、そうだった。数週間前に会った時に「まだ食べられなくて体重がへっちゃうのよ」と彼女にこぼしたんだった。


彼女の英語はインド訛がひどくて半分も分らない。彼女も日本語なまりの英語は分りにくいにちがいない。お互い大切に思っているのだけれども、コミュニケーションがなかなかうまく行かない。


「大丈夫。最近かなり食べられるようになったのよ。特に拡張をしてからは大丈夫。これは時間がかかるのよ。神様には充分に働いて頂いているから、闘わなくてもいいのよ。拡張っていうのはね。。。。」


私のために神様と喧嘩してると言う彼女の素朴な言葉には感動してしまう。


今日の彼女は私に家族の写真を見せてくれと言う。棚から額に入った写真をおろして説明する。
「これが長男。今仕事を探してるんだけど、結構大変そうなの」
「ふ〜〜ん、誕生日はいつ?」
「1月26日」
「あら、めでたい日ね。インド共和国の日だわ。誕生日の前に絶対に仕事がみつかるわよ。お祈りするから大丈夫よ」


おいおい、ちょっと違うんじゃないか、と私達の妙な会話を書斎で聞いていた夫が米国の就職事情を説明する。でも「絶対」というきっぱりした彼女の言葉にはオプティミズムと希望がある。とっても嬉しい言葉だった。


クリスマスの夜は御友達の家に招待されてディナー。立派なクリスマスツリー、沢山のクリスマスプレゼント、嬉しくて興奮している子供達、贅を尽くしたディナーにデザート。。。普通の家族の普通の年の普通のクリスマスがそこにはあった。突然今ガールフレンドの家でクリスマスディナーをご馳走になっている長男が不憫になった。


今年は2日前のディナー以外クリスマスらしいことは何もしなかった。プレゼントも、私の収入がなくなって家計が苦しいからと大幅に予算をカットさせてもらった。「ごめんね、ツリーも飾らなくて」「ごめんね、もちょっとプレゼントできなくて」。。。


長男にとっても、ドイツの友達の家でクリスマスを過ごしている次男にとっても今年はとっても大変な年だったろうと改めて思う。
ま、22歳と20歳の男の子に対して不憫もないんだけど。