メーンより


水曜よりちょっと肌寒いメーンに来ている。前回メーンに来た時(9月上旬)はまだ固形物が食べられなかった。2週間後の今回は夫に言わせると「馬のように」食べているそうだ。術後は、かなりの間美味しいものを食べられなくなるから、本人は結構真剣である。


昨日は午前中6キロ歩いた後、夫に付き合ってクラッシクギターを物色に出掛けた(勿論買わない。)北にドライブして沿岸の小さな町をほっつき歩いた後、寿司屋に入った。米国の田舎の寿司屋だから、どんぶりや麺類もある。そこで枝豆、シューマイ、タコ酢の前菜に加え、夫は握り、私はかけ蕎麦と太巻きを注文した。ご飯が今イチだったけど、夫からくすねたウニは最高に美味しかった。


ここのところ、あまりによく食べるので、命の恩人(?)である経腸チューブには時々お休み頂いている。食べ過ぎて腸圧が高いとチューブを開けた途端に腸液(食べた物の色をしている)が吹き出して来るのだ。さらに、これを入れていると代謝が高まって体温が異常に高くなって夜良く眠れない。チューブ栄養だけに頼っていると、廃棄物も身体もチューブ栄養の匂いだらけになる。それに誤ってチューブをひっぱてしまうと縫い目がそれはそれは痛い。しかし、このチューブのおかげで抗がん剤放射線治療の間も無事生き延びることができた。


メーンに発つ前日、訪問看護婦の来るのが遅れた。その理由は、食道癌患者の経腸チューブ障害である。夜中栄養注入中にその患者のチューブが抜けてしまい救急病棟に運ばれたのだと言う。救急病棟では抜けたチューブを再入せず、新しいチューブを入れたらしいのだが、どうも別種のカテーテルを入れたようでお腹から6センチばかり突き出ているのだと言う。チューブの本格的再入は月曜まで待たなければならないらしい。


その患者はチューブを使うことを拒否(その気持は痛いほど良く分る)。しかし2日間何も食べていないので衰弱が激しい。やっとのことで患者にチューブを使用するように説得したのだと言う。日本だったら即入院なんじゃないだろうかと思いながら、その話を聞いた。同時に自分のチューブに殆ど問題がなかったことを感謝した。今更ながら癌科医の「Your tube is the most beautiful J-tube I’ve ever seen」という言葉を反芻する。


ここ2日間、友人2人が子宮摘出手術をした。1人は良性の子宮筋腫に伴う子宮摘出だったので日帰り手術の予定だったが、筋腫の数が多すぎて時間がかかり結局一晩入院。子宮口まで取ってしまった。もう一人は卵巣嚢腫。卵巣腫瘍の疑いがあるので子宮と卵巣を摘出した。彼女の場合は病院に3,4日入院する。どちらにしても日本だったら2、3週間入院させられる筈である。アメリカ人が体力があるからなのか、単にシステムの違いなのか、あまりに違う。私の入院期間も日本に比べると非常に短いので(日本だと1ヶ月以上入院しているようだ)、時々不安になる。


少なくとも、日本でお産をした時の1週間入院は私には長過ぎて、米国の48時間が丁度だった。また前回の経腸チューブ挿入の際の3日間も適切な入院期間だった。


日本の患者さんのブログを読むと、検査のために1月間入院したりしている。私の場合は日帰りの検査を2、3回やった後、経腸チューブ挿入時に5種類ぐらいの検査が同時進行で行われた。


また、日本の患者さん達は入院中に外食したりビールを買いに行ったりしている。これは米国では絶対考えられないことだ。まず、そこまで恢復しているのなら入院なんかしていないし、入院中は食事も、行動も厳しく管理されている。退院前日は栄養士さんとの面接、鎮静剤の摂り方、チューブの使用法などのティーチングがあって忙しかったし、かなり緊張した。この差はどこから出てくるのだろう。 日本の医療システムにお金があるようにも思えないのだが。