今日は鍼の日。ルンルン気分で出掛けた。


鍼師のEは、今日の気分、エネルギーレベルをまず尋ねる。「昨日白血球が足りなくて化学治療ができなかったことでフェイントをくらった気持がしてるの。やっぱり身体が小さいとハンディなのかしら」とか「食道炎でまいってる」とか正直に思っていることを話す。彼女は先週と同じように舌を見て、脈をとった後今回は食道、胃の機能を中心にした鍼と、元気活性の鍼をしてくれて、足のマッサージ、背中のマッサージでまとめてくれた。


鍼をさされたまま横になっている間は数年前に再訪した種子島の青い海と真っ白い砂が何故かイメージで湧いて来た。ちりちりと熱い砂と爽やかな海風、きれいだったな〜。Eの人柄だろうか、ここに来て鍼を受けていると高級スパでマッサージを受けている気になる(行ったことはないけれど。)私のためにスケジュールを調整して運転をしてくれる夫に悪いぐらいの贅沢な気持になるのである。日本の患者さんも、癌治療中に外泊ができる時はマッサージや鍼を試してみるといいと思う。病気であることを忘れて心の底から快適な気分になれる。


こんな風に気持に余裕が出て来ると、自分の状況にもかなり客観的になれる。


「吐き気がします」と言えば、医者は何種類もある薬の中から私に会ったものを探してくれる。「免疫活性をはかりたいんですが」と言えばサンフランシスコの医者が処方箋を出してくれる。「体重を維持したいんですが」と言えば栄養士がアイデアを出してくれる。ブログを書けば励ましの元気玉一杯のコメントを皆から貰える。なんて贅沢なんだろう。


ベトナム戦争後に難民ボートでベトナムから米国に渡った人々。ぎっしりと人が一杯で足を踏む場もない衛生状態の悪い船倉でどんなにひどい船酔いに苦しんだことだろう。亡くなった人も多い筈だ。アフリカから家畜のようにボートに積まれて来た奴隷の人々。彼らの苦しみはいかほどのものだったのだろう。政治も治安もどんどん悪くなるイラクで今生きている人々。私の前を歩んだ人々、今一緒に歩いている世界の多くの人々と比較すると、私の生活は所謂「王侯貴族の贅沢」だ。少々のことで女々しく不平を言ってはならないと思う。


ところで今日は放射線癌科の医者と話をする日だった。食道炎がきついんですがと言ったら「ミルクに蜂蜜を混ぜて飲む。その10分ぐらい後に食べると大丈夫だ」と言われた。家に帰って早速実践してみたら、ホントに効くのだ。飲み過ぎて食道が荒れている方は試してみるといいと思う。


同じ質問をサンフランシスコの漢方医にメールでしてみた。実は彼は今中国に居る。彼からの返事は「暖かいお湯と蜂蜜のミックス」と「梅肉と生姜入りの葛湯」だった。癌科医はザンタックというH2ブロッカーを処方してくれたのだけれども、暫くは蜂蜜のバリエーションと葛湯を試してみようと思う。

西洋医学の進歩はすばらしいけれど、「生活の智慧」みたいに昔から積み重ねられて来ている『民間』療法は決してあなどれない。補完的にどんどん生かして行きたいと思う。