今日は腫瘍内科医の検診。癌の発覚から5年9ヶ月。日本では何年間検診するのか知らないけれど、米国では少なくとも10年間、腫瘍内科医も、外科医も、放射線科医も検診をしてくれる。こうやってフォローアップされることで、私も症例の1つになり統計の母数になっていくのだろう。


ところで、私のブログを紹介して下さっている雄三さんサイト「癌との闘いと医療について - 食道癌闘病記と患者側からの一私見」で「長生きしたければ、がん検診は受けるな」という岡田正彦先生の記事を紹介なさっている。


http://gendai.ismedia.jp/articles/-/31785


食道癌の早期発見で命拾いしたものとしては、ギョッとした記事だったけれど、どうやら、先生の言いたいのは過度の検診は意味がないと言うことらしいのでほっとした。今のツイッター社会では見出しが内容をゆがめてしまいがちだから、読む方も用心しなければならない。また、確かに早期の癌で自覚症状がない場合、治療がとてもつらい。特に患者が高齢の場合は「どんな治療をどこまでするか」を充分に検討すべきだと思う。


ところで、すごく素朴にもし私の癌が早期(と言ってもステージ2)で発見されなかったらどうなっていただろうかと考えてみた。米国では「人間ドック」とは呼ばないけれど、1年に1度の主治医との検診があり、血液検査や尿検査、メタボの測定他、生活習慣のチェックをした後、コロノスコピー(大腸癌検査)やマンモグラフィー、婦人科検診などをスケジュールしてくれる。私の場合、その時に「3か月咳がとまらないんですけど。。。」と訴えたのが契機で癌が発見された。


想像するに、自分で「これはおかしい!」と感じた時点で医者に行ったとしたら、それは飲み込みに不自由が出て来た時にちがいない。その時点では癌が食道を塞ぎ、深く進行し,ステージ的には必ず3期以降。つまりリンパに飛んでいて、転移が避けられない状況になっているだろう。体重も減っていて手術に必要な体力がなくなっているかもしれない(2期でも、体重は減りつつあったのだ。)食道癌は質が悪いから、多分今頃は死んじゃってたにちがいない。


少なくとも食道癌に関して言えば、早期に発見されれば内視鏡による治療が可能だ。開腹手術に比べ、術後のクォリティオブライフも段違いにいい。早期発見がとても重要だと思う。


ごく最近知人がメラノーマの治療を受けた。癌の発覚は去年の秋だった。前から足の皮膚に異常があったのだが、フルタイムの仕事に就いていなくて医療保険がなく検査を先延ばしにしていた。やっとフルタイムの仕事+保険を獲得し、医者に行ったところ直ぐ手術。すでに3期まで進行していてリンパへの転移があったので術後は治験フェーズ3の新薬の化学治療を受けていた。しかし、この週末、ひどい大腸炎で病院に担ぎ込まれ、現在検査中だ。大腸に転移してしまったかもしれない。メラノーマも早期に発見すれば、局所の癌細胞を切除する小さな手術で治療できる癌であるだけに残念で仕方がない。


さて、岡田先生の記事には同意できる所も沢山あったけれど、疑問に思ったところもかなりあった。


そのうちの一つがCTの被爆で癌が発生する米国のリサーチというくだり。食道癌にかかり、3重の治療をした私は放射線治療に加え、数えきれないほどのレントゲン、CTスキャンMRIを撮っている。今日腫瘍内科医に聞いてみたところ、 これはケースリサーチであり、因果関係を確定するものとしては精度の高いものではないとのことだった。しかし「治療による被爆には可能性はある」とのことだった。

幸運なことに、およそ6年前にあれだけ被爆(治療)したにもかかわらず、まだ甲状腺も大丈夫。最近は癌に罹ったことを殆ど忘れて生活している。IMRTという当時最新の手法で臓器を保護したからかもしれない。危険を伴わない治療なんて存在しない。その時点の最善の選択をして、後はケセラセラだと思う。