フランスから帰って来てから初めての絵のレッスン。先生から旅の前に「外国旅行した時は必ず、その国の画材を買いなさい。新しい発見があるから」と言われていたので、ルーブル美術館に向う途中、セーヌ川沿いのボルティア通りでStore Sennelier - colors of the Quai Voltaireという店を発見して入った。


お店は何となく古めかしい匂いがして、カウンターの向こう側には薬剤師のような白いコートを来た女性が立っていた。プロ用のお店だよという声が古びた引き出しや、ショーケースから聞こえてくる。びびりながら、「小さな旅行用のセットがありますか」と聞いたところ、小さなセットを薦めてくれた。12色の水彩用固形絵の具が8センチX6センチの昔風の黒いメタルケースにひっそりと入っている。値段を聞いて目玉が飛び出した!およそ80ユーロ!「やめようかな」と思ったけれど、その店で手作りした絵の具だと言う。だからカウンターの向こうの人が薬剤師のような格好をしているわけだ!


私の横で絵の具を求めていた人はアルゼンチンからのアーティストだ。ほらやっぱり本物の人の来る店だよ。私なんかここにいるのも恥ずかしいよ。「高すぎるし、私素人だから買うのよそうかな」と後ずさる私に「こういうのは縁だからね。それに次、いつパリに来るの?」と夫がけしかける。「筆も買った方がいいよ」(この人は営業にむいてるんじゃないだろうか?)確かに、もう2度と訪れることのない店かもしれない。「一本だけ筆を買うとしたらどれを薦めます?」と聞いてIsabeyのセーブルのしっぽでできた筆も購入した(筆は米国よりずっと安かった。)さらに水彩用の紙(小さな小さな冊子になっているもの)も買った。

そして今日、先生と新しい絵の具を使ってみた!!すごい。ほんのちょっとだけ筆にふくませるだけで凄い色がでる。その色の鮮明なこと。そして筆の使いよさ。怖いぐらいだ。一番すごいのは水が汚れないことだ。市販されている、特に素人用の絵の具にはピグメント以外に色々なフィラーが入っているため、水が直ぐにごる。ところがこのセットはピグメントの濃度が濃いために色は全部紙に移行するのだ。繊細で透明な色をつかっているうちに、自分のスタイルが影響されてくるのが分かる。


匠の作ったバイオリン、チェロ、魂ののりうつる『お能の面』の話などをきくけれど、道具ってすごいものなんだ。。。。