今週は仕事が余り入っていない。


さて、2週間前メーンのバスという小さな町で購入した日本製Bee Houseのティーポットを抱えて友人Jを訪問した。彼は私が時々行っている教会の牧師のご主人で2年前多発性骨髄腫(血液癌)に罹った。去年の夏、Dana Farber癌センターで自分のステムセルの移植をおこなった。80%の患者が成功すると言われているこの手術が彼の場合、何故かうまく行かなかった。手術が行われたのは6月。上手く回復しているように見えたので9月には仕事(高校の物理の先生)に復帰したのだが、生徒に囲まれたのがよくなかったらしい。今年の7月にもう一度手術を受けることになった。今回は自分の弟のステムセルの移植である。免疫が完全に回復するまで自宅隔離。仕事は1年間できない、運動もできない、レストランにも、スーパーにも行けない。外出できるのは病院だけ。会える人の数も限られている。


手術はうまく行ったのだが、まだ赤血球を自己増殖できないので毎週癌センターで輸血を受け(1日がかり)、増血剤の注射を受けている。回復がおそいのは昨年失敗した自分のステムセルの移植の際の抗がん剤の使用のせいらしい。


私達は去年は「癌仲間」だった。今年私は癌生存者、彼は未だに癌患者。。。


さて、以下は彼の奥さんがニュースレターに書いたニューヨーカー(雑誌)の一コマ漫画の話である。彼女はこの漫画(Roz Chass作)が気に入っている。


街角に4人の機嫌の悪い人が並んでいる。そこの住所は「怒りと狂気の交差点」。4人のそれぞれの頭上には吹き出しがある。それを見ると何故彼らが怒っているかが分る。最初の中年の女性は「自分がボブディランでないから怒っている。」次の年配の男は「今が18世紀じゃないから頭にきている、」次の女性は「オズの魔法使いが小説だったから怒っている、」最後の10代の男の子は「飛ぶ事が出来ないから怒り狂っている。」ーー彼女は続けるーー私はこの住所をよく知っている。現実にハッピーでない人、自分の環境を厳しく判断する人、現実を見て自分の基準、理想にあわないと決めつけてしまう人は、当然この交差点でしばらく時間を過ごすことになる。「現実」と「現実」を受入れたくない気持との間でのいらだちは、狂気を生み出す。真実に対して怒り狂う。。。


ケアテイカーとしての彼女の真実の怒りである。2人にとってこの夏はとてもタフだった筈だ。


Jは本当は私と会ってはならないのだが、玄関口で会ってくれた(私は訪問する前にシャワーを浴びた。)一見元気そうだった。


「『怒りと狂気の交差点』に立っちゃうことが時々あるかもしれないけど、その時は奥さんと一緒にこれでグリーンティでも飲んでね」と言ってプレゼントを渡したら、Jは「そこにいたら何の解決もないんだよ」と言って笑った。


この次は美味しい日本のお茶を持って行ってあげよう。