7/15/06

週末なのでまたメーンに来た。いつもは夫と2人で来るのだが、今回は次男と次男のガールフレンドも一緒である。今回は2階のペンキ塗りを手伝ってもらう予定。

このメーンの小屋を購入して3年になるが、使えるようになったのは去年の暮頃からである。


夫は西海岸のシアトル出身なのに、メーン州の大学に行き、当州の海岸線の虜になった。また、子供の頃の彼のシアトルの家からはワシントン湖が眺望できたので、水の見える住処が欲しくて仕方がなかった。


子供達が2人共大学に通うようになり、どうやら経済需要が見えて来て「投資+隠居場所」を探そうということになり、この小屋を手に入れた。しかし、共稼ぎで、やっと子供を大学に出しているような私達に手の届くような場所は簡単には見つからなかった。


やっと見つかった小屋は、日本で言うと2LDK+屋根裏部屋の小さなもので、ロブスターマン(ロブスターの漁師)の家だった。基礎のセメントには大きなヒビが入っていて、雨が降ると地下には水が流れるように入って来る。1階の内装はロブスターマンが日曜大工で化粧板や床を途中まではめて、そのままうっちゃってしまっていた。2階は単なる物置だった。


それでも、ベランダから見える入り江の美しさと、ままごとの家ような狭さの快さと、手を入れさえすればいくらでもきれいになるという可能性に賭けて購入した。


ところが、手を入れようとすればするほど問題が出て来るのである。まず地下の基礎のヒビが不動産屋の評価よりずっと深刻なことがわかり、家を浮かして、基礎を打ち直した。私達のような小市民とっては大枚の出費だった。また、屋根裏は客が大挙押し掛けて来た時のオーバーフローの寝室にと計画したのだが、構造的に問題がある事がわかり、補強工事をした。そして内装。。。
投資、隠居どころではなく大変な金喰い虫になってしまった。


私の弟は日本の某著名不動産会社に勤めていて、「日本の不動産バブル崩壊」を個人的にも業界的にも厳しく見つめて来ていたので、私たちの計画には最初から懐疑的だった。だからここ3年間の失敗談は彼には「うやむや」と隠して来ていた。

結局過去3年間「不動産屋を訴訟にかけよう」「まだ市場が固いから売っちゃえ」云々と夫と私は討議を重ねたのだが、結局は引き戸越しにベランダから見える静寂な景色の方が勝った。去年の夏は週末ごとに出掛けて行って、夜は固い床に寝袋を敷いて寝て、ペンキを塗ったりニスをぬったりした。今もまだ仕上げなければならないところも多いのだが、かなり快適になり、非常に愛着を感じている。


『山あり谷あり』だったけれど、やっと何となく住処らしくなったこの小屋が、今は私の週末の療養所になっている。まるで、3年かかって理想的な療養所を作ったみたいなものである。月曜日(来週から火曜日に変わったが)に化学治療が始まるスケジュールなので、週末にこの小屋で静養をして、来週の治療に備えるというのはかなり贅沢なルーチンである。


私の収入がなくなってしまったわけだから、この小屋を手放す可能性もあるだろう。でもこの時期に、この小屋で静養できる幸運には本当に感謝している。