仕事、出張、旅行とバタバタしているうちに癌治療を開始した2006年6月から丸6年が過ぎた。その様子はid:kuwachann-2_0ここに記した。


ところで、中村勘三郎さんが初期の食道癌というニュースを読んでびっくりした。なぜなら、私は勘三郎さんがまだ勘九郎と名乗っていた2004年に間接的ではあったけれど一緒にお仕事をし、お話をする機会があったからだ。


2004年の7月、勘三郎さんは平成中村座を率いてNY公演をなさった。NY公演はNY市警察を舞台にのせる大々的なものだったのだが、その1週間前ボストンのCutler Majestic Theatreで「棒しばり」と「連獅子」(息子の七之助さんと共演)の小さな公演をなさった。その時私はジャパンソサエティを通じて照明係の通訳として雇われ、舞台の設営、練習、本番まで3日にわたる仕事をさせていただいた。それはそれは興味深かった。


このCutler Majestic Theatreと言う劇場はボザール様式の1908年にオープンした美しい劇場だがすっかり廃墟化していた。しかし1980年代に巨額を費やして補修作業が行われ往年の姿に戻され、とても話題になっていた。


さて、どうやら設営が終わった最初の日の夕方のこと。ぼーっと一人で美しく出来上がった舞台を見ていると、横に勘三郎さんが来て「美しい劇場ですよね。こんなところで公演できるのは感激です」とおっしゃった。あの有名な勘九郎(当時)さんが私に話しかけている!すっかり舞い上がったのだが、「ほんときれいですよね」ぐらいの受け答えしかできなかった。でも、その瞬間の思い出は私の宝物になった。


舞台の裏方のお仕事をすると色々な特典がある。その仕事のおかげでニューヨーク公演のドレスリハーサルのチケットも頂き、ニューヨーク公演も見せて頂いた。


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その勘三郎さんが私と同じ食道癌。私は本当に普通の人で芸能界などとの接点は全くない。なのに、私がたまたま会ったなかにし礼さん、そして勘三郎さんが食道癌にかかった。とっても不思議だ。


なかにし礼さんは手術をしない治療法を選ばれた。勘三郎さんの癌は初期とのこと。どうか内視鏡手術で治療できますように。