奇跡の気管癌の治療
先日テレビのニュースで「奇跡の治療」という言葉を聞いた。画面に出ていたのは私の食道摘出手術をしてくれた外科医!!!!
気管癌にかかった14歳の少女。4つの病院から治療不可能と拒否され、6か月の余命を宣告された。彼女と彼女の母親が最後に訪ねたのがBrigham and Women's Hospital(私の手術をしてくれた病院)である。過去2回に亘る腫瘍摘出手術のせいで彼女の気管と食道の間には穴が空いている。
当病院では、医療史上始めて気管の自己培養を試みた。まず彼女の肋骨から軟骨組織を採集し、培養器の中で培養。その組織をポリマー繊維に接種し、繊維をチューブに巻き気管の形に模した。そのチューブを彼女の腹部に埋め込み8週間さらに培養。
3月18日の14時間に及ぶ手術では、気管癌の切除と気管の移植が計画されていた。残念なことに培養が半分しかできていなかったので、気管の移植はできなかった。しかし気管癌があまり大きくなかったため(クゥオーターコインと同じサイズ)気管と食道を摘出し、胃管をつくり残りの気管とつなぐことができた。患者はすでに退院し、自宅で療養中。
これまでは呼吸も食事もできなかった患者が私達食道癌患者のような身体になったわけだ。胃管が気管まで引き上げられているから、胃酸の逆流などが食道がん患者より大変だろうけれど,きっとそれなりに適応して行くに違いない。素晴らしいニュースだ。
Brigham and Womenでの食道癌摘出は胸部外科で行なわれるので、私の外科医は肺癌の手術も食道癌の手術もする。だからこの手術が可能だったのだろう。日本の場合は食道癌は消化器科の受け持ちだけど、こんな場合どうなるんだろう?
ところで、どうやら医学的には胃管で気管につないだこと、気管培養ができたことに価値があるらしい。半分だけではあったけど。