長男のガールフレンドはメディカルスクールに行っていて、今はインターンなのだが、医者になることに対して大きな疑問を抱いていて、いっそのこと学校をやめたいと思い詰めている。患者を物として扱う医者達の姿、訴訟を懸念しての治療、さらにトレーニングでの「指導医(天皇)→レジデント(働き蟻)→インターン(人間以下)」扱いにかなり傷ついているらしい。彼女の家族は彼女が8歳の時に旧ソビエト連邦の国から移民して来ている。だから彼女が米国で医者になることは父親の夢でもあるらしい。彼女が長男に相談をし、彼が私達に相談をして来た。


医者になるには向き不向きもあって充分に検討すべきだとは思うけれど、彼女にはいいメンターが必要かもしれない。私の知り合いの息子さんはホーピーインディアン居住区でインディアンのために医者になったし、私の腫瘍内科医は常に死と向き合いながら患者に治療と癒しを与えている。もしかしたらそういう人がいいインプットを提供してくれるかもしれないとメールを出してみる。

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夕方友人から今にも泣きそうな電話が入った。彼女はキプロス人で母国語はギリシア語。でもイタリア語もフランス語も、もちろん英語もできる。今週は英語⇄イタリア語のワークショップの同時通訳を一人でやっている。客が一人なので休憩時間や食事の時間の通訳もやらされた上にドキュメントの翻訳まで頼まれ、「これ以上の仕事はできません」というのに「どうして?」と言われてしまうのだと言う。エージェントが中に入っていないので、最終的に支払いをしてくれるかどうかも不安らしい。「ワークショップのオーガナイザーに間に入ってもらって今日中に支払いをしてもらう。もしそれに同意してもらえないようだったら仕事をやめて帰っておいで」と助言した。


インターネットの世の中になって、見ず知らずの人から直接に仕事が入ってくることも多くなった。私は火傷をしないで済んでいるけれど怖い。