仕事から帰って来たら友人が肺癌で3月21日に亡くなったと言うメールが入っていた。彼女が肺癌の宣告を受けたのはおよそ2年前。私の癌が発見される1ヶ月半ぐらい前のことだった。西洋医学を否定していた彼女は、レントゲン、CT、ペット検査さえにも抵抗を示し、勿論抗がん剤の治療も入院もしなかった。替わりに自分の免疫を増進させて、癌と共存するのだと、自分でマクロバイオティクスの食事療法や、お灸、インド医学などの治療を探して受けた。


たまたま同時期に癌に罹った私に、本当に純粋に私を助けるつもりで彼女は上記の治療法を一生懸命薦めた。


そして食道摘出の手術を受ける5日前に彼女から「抗がん剤で癌細胞が消えたんだから、手術をやめなさい」という強い言葉のメールが来た。「癌は以前のような不治の病ではないのです。自然退縮の道があるのです、だから免疫を低減させるような手術はやめなさい」と。好きで手術をする人はいない。特に食道摘出のように後遺症が一生ついてまわる手術の前には皆が逡巡し、悩む。やっと「足がなくなるのと同じだけど、仕方ない」と納得した矢先に貰ったメールで心が千々に乱れた。


返事を書いても、必ず反論してくるだろう、そしたら私の心にまた嵐が吹くと思い、返事を書かなかった。回復期に入った時点でも私は自分のことで必死だった。自分も苦しみたくなかったし、彼女を苦しめたくもなかった。そしてずっと心配はしていたのだが、彼女からの手紙に返事もかかなかったし、この一月に彼女の容態があまり良くないことを聞いてもメールをださなかった。始まりは同じがんでも、交差点で私達は別の宇宙をえらんでしまった。私が手紙を書くことは、彼女の神経を逆撫ですることになると思った。


最期は痛かったのだろうか。苦しかったのだろうか。ホスピスを使ってくれたかな。ずーっと返事を出せずにごめんね。
安らかに眠ってください。合掌。