「PETスキャンはなかなかいいよ」と医者は部屋に入って来るなり言った。
最初の言葉が聞こえなかったので、もう一度聞き直す。
「PETスキャンはなかなかいいよ。ちょっと見てみますか」と彼はフィルムを蛍光灯台(壁)に並べた。
癌の部分は黒く映っているけれど、肺も横隔膜もきれいだ。PETスキャンの解像度を考えると100%確実に転移の可能性がないとは断定できないらしが、局所治療で大丈夫そうだ。嬉しくて思わず声をあげる。


実は6月1日に先日会った外科医が内視鏡検査をすることになっていたのだが一応それをキャンセルすることにした。セカンドオピニオンを入れた上で執刀医を決めたいとリクエストしていたのだが、内視鏡検査は執刀する外科医がするべきなのだそうだ。執刀医は手術の前に固い腫瘍なのか、ぐちゅぐちゅしているものであるか必ず見たがるものらしい。セカンドオピニオンについては彼の方から明日ボストンのDana FarberかBrigam and Women's の医者に連絡してくれることになった。


さて、局所に集中しているとはいえ、かなり大きい腫瘍なので、手術が先か、抗がん剤放射線が先かは執刀医の意見を含めてまだ検討の余地があるらしい。もし抗がん剤が先ということになると、うまくいけば来週ぐらいから治療にかかることになる。


医者とのアポが午後4時だったので、朝方「希望」というタイトルで語られた某医師による講話のCDを教会から貰って来て聞いた。この医師自身が2種類の末期がんがから生還した人だ。心と身体がいかに密接に結び付いているかという観点から、癌のような様々なストレスを克服する5つのポイントを語っていた。要約すると1)できるだけ普段と同じ生活をして、生きてる間にパリに行きたいとか、クリスマスまでは生きたいという目標をたてないこと。それを達成すると急に生気がしぼんだり、鬱になってしまうので目標は段階的に常に『次』のあるものにする、2)何か(自分でコントロールできる)新しい事を始める、3)家族、友達に言いたいこと、伝えておきたいことを今伝達する、4)他人に手を差し伸べる。他人の役に立つほど充足感のあるものはない、5)新しい治療法や治験に勇気をもって臨む、である。


とても実践的でポジティブな話だったので、私にはどんな新しいことができるだろうかと考えているうちにアポの時間になった。先々週、まだショックの中で訪ねたクリニックは色のない灰色の建物だったけれど、今日は初夏の光の中で輝いてみえた。ポジティブな話の影響だろうか。脈拍も68と全く緊張していなかった。心と身体。本当に密接に結び付いているようだ。


昼過ぎには友達から5穀米が届いた。私が体重減少を心配していたからだ(と言っても50を切ったぐらいなんだけど。)せっかくのご主人の台湾土産を貰ってしまうことになったけれど、お米も気持もとっても嬉しい。明日からさっそくお粥にします。