放射線治療に降りて行くエレベーターの前がざわざわしていた。EMTと呼ばれる簡易救急チームが5人、ストレッチャーの周りを囲んでいる。何か大きな事故があったのか、重病人なのかと思ったら、日本に住んでいる方には絶対に想像がつかないぐらい肥満した男の人を大挙して運んでいるところだった。300キロは有にあったのではないかと思う。


そこまで太った人がストレッチャーに横たわると、柔らか〜く作ったマッシュポテトをポテっともった形になる。お肉が力なくボテボテと山になっているのだ。EMTの隊員は真面目な顔をしているけれど、その顔に時々「やれやれしかたね〜な〜」という表情が見え隠れしている。EMTがストレッチャーで運ぶ時は大体2人でペアだから経済的には非常に非効率な患者である。


実は私の長男もEMTの資格を持っていて大学1、2年の頃は夏そのアルバイトをしていた。当時よく「今日は250パウンド(125キロ)の人を運んだから腰がいたい」などと愚痴を言っていたのを思い出す。


医療器具の会社で仕事をしたことがあるのだが、米国には太った人のために、特別頑丈な手術台やストレッチャーが作られている(確か400キロまで大丈夫という標準だったように覚えている。)米国の病院はこういう巨大で頑丈な器具をそろえておく必要があるのだ。そいうえば、私に鍼治療をしてくれるEも別室に大きな寝台を置いている。


日本に帰省した後、しみじみ米国に帰ってきたと感じるのは、空港を歩いている人々の肥満度である。その大きさが新鮮な驚きとなって迫って来る。米国の肥満は非常に大きな社会問題、医療問題になっている。問題だ問題だといいながら過去10年間で国民は総じて体重が重くなっているのは悲しい話だ。いったいこの国はどうなってしまうのだろうと思う。

追記:写真はやっと咲いた家の庭の紫陽花。冬雪が少なかったので花の数が少ない。